レーザ測定だけじゃない! 複数カメラを使った3次元計測技術による寸法検査
- 俊徳 大山
- 10月2日
- 読了時間: 4分

製造業において、「長さ」の検査は最も基本かつ重要な品質管理要素です。
通常、製品・部品の長さの検査には、(手動測定を除けば)ストラクチャードライト、レーザ距離センサ等が使われますが、製品の種類によっては表面光沢への対応が必要となったり、検査スペースやオペレーションの都合から非搬送での検査が求められることもあり、そのようなケースでは従来手法がうまく機能しないことがあります。
本記事では、ストラクチャードライト、レーザ距離センサとは異なる新しい方法として、複数のカメラを使った3次元計測技術によって、長さの検査を行う方法について紹介させていただきます。
従来の検査方式
ストラクチャードライト方式
ストラクチャードライト方式は、投影した縞パターンの変位から3D形状を再構成し、長さを算出する方法です。
強み
3次元形状も同時に取得可能
複雑な曲げや歪みも把握できる
非接触で広範囲測定
弱み
金属光沢等、表面反射がある測定対象は、縞が乱れるため誤差が発生する
キャリブレーション必須で運用コスト高
大型の測定対象では複数スキャンの繋ぎ誤差が発生するリスクがある
測定精度(目安)
数10µm〜0.1mm(条件次第)
測定範囲
数cm〜数十cm程度が一般的
本手法は様々な場面で有用な測定方法ですが、表面反射がある測定対象の検査においては誤差の問題が大きく、うまく機能しないケースが多いのが課題でした。
レーザ距離センサ方式
レーザ光の反射から距離を測定し、複数点をスキャンして長さを算出する方法です。
強み
高精度(µm〜0.1mmクラスも可能)
反射に比較的強い
単純な直線長さの計測に適する
弱み
1点測定なので走査が必要(時間がかかる)
対象が大きい場合は複数台必要
装置コストが高め
測定精度(目安)
数µm〜0.1mm
測定範囲
数mm〜数m
本手法は対象にまんべんなくレーザーを当てる必要があることから、測定対象が大きくなると、測定時間も大きくなってしまうことが課題となっていました。
複数のカメラを使った3次元計測技術による測定方法
複数のカメラを使った3次元計測による検査は、カメラ画像から測定対象の端部(エッジ)を検出して長さを算出する方法です。
測定は概ね以下のステップで行われます。
Step1:画像取得
測定対象をテーブル等の上に設置し、上方のカメラで撮影
必要に応じてバックライトを使い、シルエット化して輪郭を鮮明にする
Step 2:輪郭抽出
撮影画像から測定対象の端部エッジを抽出
ノイズを除去し、端線を直線として認識
Step 3:基準位置の設定
ストッパーなどの治具で基準端を固定
検査ソフト上で「始点」と「終点」を定義
Step 4:寸法算出
抽出した端点座標を計算し、ピクセル数 → 実寸(mm)へ変換
高解像度カメラとサブピクセル処理により、目指す寸法精度を達成
Step 5:補正と検証
必要に応じて複数カメラの視野を統合
装置に組み込まれたスケールバーや基準ゲージで定期的に校正を行い、精度を維持
本手法のメリット
2Dカメラ方式による検査は、ストラクチャードライト、レーザ距離センサのような他の手法と比較すると、下記のようなメリットがあります。
高精度を低コストで実現
高価な三次元測定機やレーザ走査器と比較して、カメラ+照明+ソフト処理の構成はシンプル
適切に設計すれば±0.1mm単位の精度程度まで実現できる可能性あり
非接触かつ高速
接触ゲージでは難しい非接触測定が可能
測定対象をテーブルに置き、カメラで撮影するだけなので、高速での検査が可能
ただし、カメラ台数を増やし、精度を追求する場合、3次元化に伴うパラメータ推定の計算時間が増加するケースがある
長尺ワークにも柔軟対応
高解像度カメラを使えば、数メートルの対象の測定も可能
必要に応じて複数カメラを使い、視野をつなぎ合わせることで柔軟に拡張可能
外観検査と同時に実施できる
寸法だけでなく、キズ・打痕・バリなどの外観検査も同じ装置で対応可
設備投資の回収が早く、工場全体の品質保証体制を効率化できる
まとめると、
検査スピードの大幅短縮
非接触で測定対象を傷つけない
多品種に対応可能
外観検査との一体化で更なる効率化を目指せる
これらの特徴から、全数検査や、出荷前の最終寸法保証を効率化できる可能性があります。
まとめ
アルジェントテクノロジーでは、画像処理に精通した開発体制 を活かし、3次元計測、外観検査システムの受託開発を行っています。
お客様の現場課題に応じた最適な検査システムを設計・実装いたします。既存の測定装置では解決できない等の課題を抱えたお客様は、ぜひお気軽にご相談ください。



