画像認識でできること・できないこと:製造現場・業務効率化で導入前に知るべきポイント
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製造業や物流、建設、インフラ点検、食品、農業などの現場では、画像認識を使った業務改善への関心が高まっています。特に、人手不足、熟練者依存、検査品質のばらつき、記録作業の負担といった課題を抱える企業にとって、画像認識は有力な選択肢の一つです。
一方で、画像認識は万能ではありません。人が見れば何となく分かることでも、カメラ画像から安定して判定するには、撮影条件、検査基準、対象物のばらつき、必要精度、運用方法を整理する必要があります。
この記事では、画像認識でできること、画像認識では難しいこと、導入前に確認すべきポイントを、製造現場や業務効率化の観点から解説します。
画像認識とは何か
画像認識とは、カメラで撮影した画像や映像から、対象物の有無、位置、形状、状態、種類、異常などを判定する技術です。
近年はAI、特にディープラーニングを使った画像認識が注目されています。GoogleのMachine Learning Crash Courseでも、機械学習は実世界の問題をデータに基づいて解くための手法として整理されており、画像分類などの問題にも応用されます。
ただし、画像認識はAIだけを指すものではありません。従来型の画像処理も、製造現場では今でも非常に重要です。
たとえば、以下のような方法があります。
方法 | 特徴 |
従来型画像処理 | しきい値処理、エッジ検出、二値化、輪郭抽出、パターンマッチングなど |
AI画像認識 | 画像分類、物体検出、セグメンテーション、異常検知など |
3次元計測 | 高さ、反り、形状、寸法、位置ずれなどを測定 |
OCR | 文字、数字、ロット番号、賞味期限、ラベル情報などを読み取る |
複合システム | カメラ、照明、AI、画像処理、PLC、データベースなどを組み合わせる |
現場で重要なのは、「AIを使うかどうか」ではありません。対象物や課題に対して、最も安定し、費用対効果の高い方法を選ぶことです。
画像認識でできること
画像認識でできることは、大きく分けると以下のようになります。
1. 物の有無を判定する
最も基本的な用途は、対象物があるかないかを判定することです。
たとえば、以下のような確認です。
用途 | 例 |
部品の有無確認 | ネジ、コネクタ、シール、キャップが付いているか |
工具・治具の置き忘れ検知 | 作業台や装置内に異物が残っていないか |
箱詰め確認 | 必要な商品や部品が入っているか |
包装確認 | 袋、箱、ラベル、封かんがあるか |
作業完了確認 | 所定の位置に部品がセットされているか |
このような用途は、画像認識の中でも比較的取り組みやすい領域です。対象物の形や位置がある程度決まっており、背景との違いが分かりやすければ、AIを使わずに従来型画像処理で対応できることもあります。
一方で、対象物の置き方が毎回違う、背景が複雑、照明条件が変わる、似た部品が多いといった場合には、AI画像認識を使った方がよいこともあります。
2. 傷・汚れ・欠けなどの外観不良を検出する
製造現場で特に多いのが、外観検査への画像認識活用です。
対象になる不良には、以下のようなものがあります。
不良種類 | 例 |
傷 | 線傷、擦り傷、打痕、へこみ |
汚れ | 油汚れ、黒点、異物付着、変色 |
欠け | 端部欠け、角欠け、割れ |
変形 | 曲がり、反り、潰れ、成形不良 |
印字不良 | かすれ、欠け、ズレ、未印字 |
包装不良 | ラベルずれ、封かん不良、異品種混入 |
外観検査では、AI画像認識が有効な場合があります。特に、不良の形が一定でない場合、良品のばらつきが大きい場合、人の感覚に近い判断が必要な場合には、AIが選択肢になります。
ただし、傷や汚れが画像上で明確に写っていない場合、AIでも安定した検出は困難です。カメラ、レンズ、照明、撮影角度、背景、ワーク固定などの撮像設計が非常に重要です。
3. 数量を数える
画像認識では、対象物の数を数えることもできます。
たとえば、以下のような用途です。
用途 | 例 |
部品点数確認 | トレー内の部品数を数える |
商品数量確認 | 箱詰めされた商品の数を確認する |
人数カウント | エリア内の人数を数える |
通過数カウント | ライン上を流れる製品数を数える |
農産物・食品の個数確認 | 選別・梱包時の数量確認 |
数量確認は、対象物が重なっていない場合や、背景と分離しやすい場合には比較的実現しやすいです。一方で、対象物同士が重なる、半透明である、形が不定形である、動きが速い場合には難易度が上がります。
4. 位置・向き・寸法を測る
画像認識や画像処理では、対象物の位置、向き、寸法を測ることもできます。
たとえば、以下のような用途です。
用途 | 例 |
位置決め | ロボットが部品をつかむ位置を検出する |
穴位置確認 | 穴や切り欠きの位置ずれを確認する |
ラベル位置確認 | 貼付位置や傾きを確認する |
寸法測定 | 幅、長さ、径、隙間などを測定する |
形状確認 | 反り、曲がり、変形を確認する |
寸法測定の場合、必要な精度によって難易度が大きく変わります。数mm単位でよいのか、0.1mm単位が必要なのかによって、カメラ解像度、レンズ、キャリブレーション、照明、ワーク固定、3次元計測の必要性が変わります。
平面的な寸法であれば2Dカメラで対応できることもありますが、高さ、反り、奥行き、曲面形状などを見たい場合は、3Dカメラ、構造化光、レーザ、ステレオカメラなどの検討が必要になる場合があります。
5. 文字・ラベル・バーコードを読み取る
画像認識は、文字やラベル情報の読み取りにも使われます。
たとえば、以下のような用途です。
用途 | 例 |
OCR | 製造番号、ロット番号、賞味期限、日付の読み取り |
印字確認 | 文字欠け、かすれ、ズレの確認 |
ラベル確認 | 正しいラベルが貼られているか |
バーコード・QRコード読み取り | 出荷、検品、トレーサビリティ管理 |
異品種混入防止 | 表示内容と製品情報の照合 |
文字認識は、印字が鮮明で、位置やフォントが安定している場合には実現しやすいです。一方で、湾曲面、反射、かすれ、手書き文字、汚れ、低解像度画像では難易度が上がります。
6. 人の作業や安全状態を確認する
画像認識は、製品検査だけでなく、人の作業確認や安全管理にも使えます。
たとえば、以下のような用途です。
用途 | 例 |
作業手順確認 | 決められた順番で作業しているか |
保護具確認 | ヘルメット、手袋、マスク、安全帯の着用確認 |
立入検知 | 危険エリアに人が入っていないか |
姿勢・動作確認 | 作業姿勢、転倒、異常動作の検知 |
危険行動検知 | フォークリフト周辺、設備周辺の接近検知 |
この領域では、映像から人や物体を検出するAIが使われることがあります。ただし、プライバシー、労務管理、誤検知時の対応、監視されていると感じる心理的負担などにも配慮が必要です。
画像認識では難しいこと
画像認識には多くの可能性がありますが、できないこと、難しいこともあります。
1. 画像に写っていないものは判定できない
当然ですが、カメラに写っていないものは画像認識では判定できません。
たとえば、以下のようなケースです。
傷が照明条件によって見えない
異物が製品の裏側に隠れている
内部欠陥が外観に現れない
透明物の中の異物が反射で見えない
対象物が重なって一部しか見えない
この場合、AIモデルを高度化するよりも、カメラ台数を増やす、照明を変える、対象物の向きを変える、X線や近赤外線など別のセンサーを使う、3次元計測を使うといった検討が必要になります。
2. 判断基準が曖昧なものは安定しにくい
「何となく違和感がある」「熟練者が見ると分かる」「これは微妙だがNG」という判断は、システム化が難しい場合があります。
画像認識を使う場合でも、OK/NGの基準は必要です。基準が曖昧なままだと、学習データのラベルがばらつき、AIの判定も安定しません。
たとえば、「目立つ傷はNG」という基準では、目立つとは何か、どの場所ならNGか、どの大きさ以上ならNGかが不明確です。限度見本や検査基準書、過去のクレーム品、境界事例を整理する必要があります。
3. すべての不良を完全に検出することは難しい
画像認識AIを導入しても、すべての不良を100%検出し、過検知をゼロにすることは現実的でない場合があります。
外観検査では、見逃しと過検知のバランスが重要です。見逃しを減らそうとすると、本来良品であるものまでNG判定する可能性があります。一方で、過検知を減らしすぎると、微妙な不良を見逃すリスクがあります。
そのため、導入前に以下を決めておく必要があります。
確認項目 | 内容 |
絶対に見逃せない不良 | 安全性・機能・クレームに直結する不良 |
許容できる過検知 | 作業者が再確認できる範囲 |
自動判定の範囲 | 明らかなOK/NGだけ自動化するか |
人の確認範囲 | 境界事例は人が判断するか |
運用ルール | 誤判定が起きたときの扱い |
画像認識は、人による検査を完全に消すためだけでなく、人が確認すべき対象を絞り込むためにも使えます。
4. 現場環境の変化に弱い場合がある
画像認識は、撮影条件が変わると精度が下がることがあります。
たとえば、以下のような変化です。
照明の明るさが変わる
外光が入る
カメラや照明が汚れる
ワークの位置がずれる
材料ロットが変わる
背景や治具が変わる
搬送速度が変わる
振動でブレる
PoCではうまくいったのに、本番導入後に精度が落ちる場合、こうした現場環境の変化が原因になっていることがあります。
そのため、実際のライン条件に近い画像で検証し、設置後も定期的な調整や保守を行う前提で設計することが重要です。
5. データが少なすぎるとAI化が難しいことがある
AI画像認識では、学習や評価に使うデータが重要です。
特に外観検査では、不良品が少ないことがよくあります。品質の良い工場ほど不良サンプルが少なく、AIに学習させるデータを集めにくいという問題があります。
ただし、不良データが少ないから必ずAI化できないわけではありません。良品データを中心に異常検知する方法、従来型画像処理と組み合わせる方法、まずは撮像条件の安定化から始める方法などがあります。
重要なのは、データの有無を早めに確認し、PoCの目的を適切に設定することです。
導入前に確認すべきポイント
画像認識システムを導入する前には、以下の項目を整理しておくと、検討が進みやすくなります。
確認項目 | 内容 |
何を見たいか | 製品、部品、人、ラベル、数量、傷、作業状態など |
何を判定したいか | OK/NG、有無、位置、数量、寸法、種類、異常など |
判定基準 | どこからNGか、許容範囲はどこか |
撮影条件 | カメラ位置、照明、背景、対象物の動き |
必要精度 | 見逃し、過検知、寸法精度、分類精度など |
処理速度 | ライン速度、リアルタイム性、撮影タイミング |
データ | 良品画像、不良画像、境界事例、過去記録 |
出力方法 | 画面表示、アラート、排出、記録、設備連携 |
運用方法 | 誰が確認し、誰が調整し、どう保守するか |
導入目的 | 省人化、品質向上、記録自動化、安全管理など |
この整理があると、AIが必要なのか、従来型画像処理で十分なのか、3D計測が必要なのか、まずは作業者補助から始めるべきなのかを判断しやすくなります。
画像認識は「完全自動化」だけがゴールではない
画像認識を導入するというと、人の作業を完全に置き換えるイメージを持たれることがあります。しかし、現実には段階的な導入が有効です。
たとえば、以下のような導入方法があります。
導入段階 | 内容 |
作業者補助 | 怪しい箇所をAIが提示し、人が最終判断する |
記録自動化 | 検査画像と判定結果を自動保存する |
一部自動判定 | 明らかなOK/NGのみ自動処理する |
抜き取り検査支援 | 重点確認すべき対象を抽出する |
二重チェック | 人の検査後にAIが再確認する |
完全自動化 | 判定、排出、記録まで自動化する |
完全自動化が難しい場合でも、検査員が見る数を減らす、記録作業をなくす、見逃しやすい箇所を補助する、といった形で効果を出せる場合があります。
まとめ:画像認識は万能ではないが、現場課題を解決する有力な手段
画像認識では、物の有無確認、外観不良検出、数量カウント、位置・寸法測定、文字・ラベル読み取り、作業確認、安全管理など、さまざまな業務を支援できます。
一方で、画像に写っていないもの、判断基準が曖昧なもの、現場環境の変化が大きいもの、データが極端に少ないもの、完全な自動判定を最初から求めるものは、慎重な検討が必要です。
重要なのは、「AIを使えば何でもできる」と考えるのではなく、現場課題、検査対象、撮影条件、判定基準、必要精度、運用方法を整理したうえで、最適な方法を選ぶことです。
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